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差別化|偏見を利用する

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「差別」「偏見」という言葉は、一見すると忌み嫌われるネガティブ用語なのですが、あえて言うとデザイナーにとってはそれこそが仕事になるところなのです。

もちろん、何の謂れもない差別による蔑視、誹謗中傷がいいと言っているわけではありません。

ただ、男・女という性別が既にあって、男性に比べると女性の方が体格的に小さく丸みを帯びている、若々しい(だろう)色、暗く重く感じる(だろう)色などというものも世界に存在している状態なのです。

そう、新しく「暗くて軽い色」を発明し、作り出し、世界に出現させることができるわけではないのが、デザイナーなのです。

世界には色々な人がいます。これを読んでいるアナタと私では、好きな色も違うであろうし、心地よいと感じる環境も違うでしょう。
そこには差異が生じます。

例えば、二軒の蕎麦屋さんがあるとして、何を基準に人は選ぶのでしょうか?

「A蕎麦屋」
「B蕎麦屋」

この情報だけで選べますか?
私でも「Bというローマ字の方が好きだから」くらいしか選ぶ意味がありませんが、ほとんどの人は、たぶん両方一度食べてみるという選択をとらないかぎりは無理ですね。
そして、両方食べてみるにしても、先に美味しい方に行きたいはずですし。

では、
「築20年ぐらいの古民家風・A蕎麦屋」
「ビル1Fのテナントでガラス張り・B蕎麦屋」

となるとどうでしょうか?

「A蕎麦屋」を選んだ方は、長年やってそう、老舗感、雰囲気がよさそう、話のタネになるかも・・・といろんなことを考えたはずです。
逆に、「B蕎麦屋」を選んだ方も、清潔なほうがいい、オシャレそう、快適かな、チェーン店なら味も安定してるかも・・・・などと考えたかもしれません。

これが「偏見」です。
食べてもないし、入ってもないのに「選べる」。
それでも「選ばなければならない」シーンが生活の中で多くでてきます。

デザイナーが「A」と「B」に対してできることは、大げさに「美味しい」と言ってあげることではなく、「他のお店とは違うよ」といってあげること、つまりは「差別化」なのです。

表現されたビジュアルをキレイに見せればいい、何でもかっこよくオシャレならいいというわけではありません。
商売によっては不必要な高級感もあります。

「今月は余裕ないし、高そうだから諦めよう」という選択肢を割と人はとります。
実際に高いお店ならばいいでしょうが、本当はリーズナブルで入りやすさを重視してる店であれば逆効果です。

もっと簡単にいうと、差別だろうが偏見だろうが「男子トイレが赤」だと紛らわしいのです。

それを変えることによる効果を、マイナスとプラスの効果を考えて提案するのが、デザイナーの仕事となります。
既成概念とはすなわち偏見なのですが、それらは利用価値がある偏見なのです。

一度、街に出て観察してください。部屋中を眺めてください。
おそらく自分でも気づかないくらいの偏見や差別化されたもの(デザイン)に溢れているはずです。

そして、そういう既視感をいかに利用できるのか、さらには覆して面白さをだせるのかがデザインに携わるものの技術となると思っています。

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